自分に「熱狂」がないことを、さびしく思うことがある

 

冒頭でこう言うのもどうかと思うが、今回まじめな話なのでご注意願いたい(なんの注意だ)

 

私にはあまり「熱狂」というものがない。

もしかしたら文章を書くことには、ほかのものよりは執着があるのかもしれないけれど、どう高く見積もっても「熱狂」という名前をつけられるという自覚はない。

 

多少心躍ることがあっても、我を忘れて没頭した、ということはない。

税理士試験を受けてたときは死ぬほど勉強したけれど、それは楽しいからではなく、「自分には何もない」という恐怖があったからだし、その努力の量は仕事を頼んでくださる方には関係なく誇るようなものでもなく、「独立できた」ことへの感謝はあるとしても、自分の気持ちが揺さぶられるようなものでもない。

 

仕事は好きだ。

会社さんの決算の数字をまとめて、「税務署に反論できるラインを保ちつつ、会社のためになる処理はどうするとよいか」とか考えてるときは昂揚を覚えるし、『好きでしかたがない仕事 税理士の仕事』でも書いたことがあるが、法律を読んで「これはこういうことだから、この解釈でいいのか」とか考えて腹落ちするとすごく嬉しくなる。

(士業の方以外にはあんまりご理解いただけない部分かと思うが)

 

とはいえ、ではじゃあ仕事に熱狂しているか、と問われると、熱狂というほどではないかな、と思う。

熱狂があるといいという。

熱狂を突き詰めろという。

安易にAIの話をするのは好きではなくなったけれど、これからの時代には、己の熱狂こそが鍵になるという。

 

それをもっともだと思う、反論できないと思う。だからこそ、自分に「熱狂」と呼び得るほどの炎がないことをどこかさびしく思う。

 

欠陥があるかと感じることもある。

 

おそらく世代の影響が色濃いものだとは思うが、現在34歳の私は、ひたすら稼いでいい家に住んでいい車に乗りたい、といった野心がない。

(妻には不自由をさせたくない、自慢できる夫でありたい、とは思う)

 

その一方、反動でもあるのだろうが、少し上の世代に感じる「とにかくプライベートを充実させよう」という気持ちも薄い。

仕事は仕事で好きだし、充実感もあるし、それほどに夢中になるような趣味もない、と思うと「とにかく遊べ」の輪にも無心で飛び込むことができない。

 

「よく遊びよく働く」人を見ても、心の底から「この人のようになりたい」と思うことができない。

 

「あれもこれもやりたいことがありすぎて時間が足りない」という感覚を、抱いたことがとても少ない。

 

では自分は何を望むのかと問うことがある。

自分は何を欲して、どうありたいと願うのかと。

 

税理士として31歳のときに独立して2年半が経ったが、最近感じるのは、1日が終わったときに、「ああ、今日も楽しかったな」という気持ちでぐっすり眠れたら、とても幸せだということだ。

 

独立してから「楽しい」が増えた。

最近どへた(美術の成績が1でコンプレックスだった)なりに絵を描くことがちょいちょいあるのだけど、これがとても楽しい。

こんなのあの、働いて働いて、前も見えない、暗い、息苦しいところにいたときにはまるで想像できなかった。

試験を受けていたときはなおさら、本もろくに読めず、ただ職場へ行き、帰っては机に向かい、仕事と勉強以外には何もない環境で、世界の輪郭が意識できないほどじりじりと狭まっていくのを頭の裏のほうでぼんやり感じることしかできなかった。

(税理士事務所はそこそこブラックな環境の多い業界)

 

そのときから考えれば、私にとって、いまは最高の環境だ。

不安もたくさんある。

でも「誰か」への不満はない。

接していて不満が生まれてしまうような人からは、離れればいい。

その決断が自分次第でできる。

それは、私の場合、独立してはじめて叶えることができた。

 

やらなきゃいけないこともたくさんあるし、自分が十分に、完璧に日々を過ごせているとはとても思えないけれど、いまはあのとき感じられなかった「楽しい」がたくさん手の中に見つけられる。

 

私は私に「楽しい」を与えてくれる人たちのことをいとしく思う。

ありがたいと思う。

自分も、少しでもお返しできないかと思う。

 

「熱狂」はまだないけれど、「日々の楽しい」はある。

いろんなことに挑戦して、少しずつ楽しいを増やしていければ、もしかしたらそれが熱狂に育つこともあるのではないか。

 

あるいは育たなくても、大切なものはひとつ増えるのでないか。

 

多くを望まない代わりに、「楽しい」がもっと増えればいいなと思う。

 

それは自分次第だから、失敗しまくっているけれど、自分のペースで進んでいけたらと願う。

 

 

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