【第1話】税理士のおれが異世界転移して確定申告無双!?【おふざけ小説】

 

注意事項
1.当記事はフィクションです。フィクションなだけではなく中身スッカスカのためご了承ください
2.税理士業界の内輪ネタ満載のため、意味のわからない用語は読み飛ばしてくださいごめんなさい

 

 

おっす! おれは累進風邪胃(るいしん・かぜい)。

 

はぁ~ぁ、今日も今日とてサービス残業。所長は定時で帰って合コンへ行き、日付が変わりそうな現時刻で事務所に残っているのはおれだけだ。

とある税理士事務所で働き、税理士としての資格は持っているもののイチ従業員でしかないおれ(所属税理士っていうんだぜ)は所長の奴隷のようなものではないか、という気さえしてくる。

 

トラックに轢かれて異世界転生でもすれば無双できるのかなあ。

でも働きながら10年勉強してやっと取った税理士の資格を活かせず童貞のまま死ぬのももの悲しい。

武道の経験もまったくないし、サバイバルの知識もゼロだからもし行けても魔物に瞬殺されそうだし。

 

税理士業界というのはブラック企業の多い業界だ。

「従業員として勤めている間は修行期間」という前時代的な認識があり、

「残業代? 出すわけないだろ貴様らは搾取されてナンボじゃ。固定給の人間に山ほど仕事振って自分は定時で帰るの(゚Д゚)ウマー」

と思っているようにしか所長の態度は見えない。

 

そのくせ求人サイトでは

「職員のことを第一に考えています!」

「みんな仲のいい職場です!」

「残業が少なめで試験に集中できます!」

と耳に心地よい言葉を並べている。おれはそれを読むたびに、匿名サイトに全部実情をぶちまけてやりたくなる。

 

まあそんなことを考えていてもしかたない。

おれはキリのいいところまで進めて帰ろうと、改めてパソコンに向かう。

別表六(二十六)の中小企業向け所得拡大促進税制の計算を終えねばならぬ。これほんと時間かかるのよね影響大きいからやるけどさ。やるけど別途お金ほしい。なんだったらやらなくてもお金ほしい。息を吸って吐いてるだけでお賃金アップしてほしい。

あと全然関係ないけど復興特別所得税おめーいつまで居残るつもりだよ端数が細かいんだよ。

 

と、ぶつぶつ言いながらパソコンに入力していると、となりの席の陣頭(じんとう)くんが机に置いていった電卓が、ぺかーと怪しく光を放っている。

 

「……?」

 

おれは訝しげに見やって、目をこする。疲れ目か? 新手のドライアイか? 今日はもう帰ろうかな、思っていると、陣頭くんの電卓の太陽光パネルがひときわ強く輝きはじめる。なんだなんだなんだ。ところであの太陽光パネルってほんとに太陽光発電してんの? あれで電卓が稼働する電気まかなえてんの? すごくない? そんな電気つくっちゃう太陽光パネルか電力消費の微弱な電卓かどっちかわかんないけどどっちかすごくない? 混乱ゆえに独り言が強まるおれの耳に、か細い声が届いた。

 

「……せいしゅよ」

 

「…………わが世界の、救世主よ」

 

老人の声だ。どうも電卓から聞こえてくる。なになになに怖いんだけど。おれは思わず立ち上がり、キャスターつきの椅子をごろろと後ろへはじいた。幽霊? 新しいアプリかなんか? まさかほんとに異世界的なあれ?

 

「………………きゅうせ、あれ?」

 

老人の声が戸惑ったような言葉に変わる。

 

「これ、カシオ?」

 

念のためキョロキョロとあたりを見渡すが、どう見てもおれ以外には事務所にいない。おれはおそるおそる答える。

 

「はあ、そうですけど」

「まじか」

「陣頭くんカシオ派なんで(作者注:電卓にはシャープ派とカシオ派があり、きのこの山派とたけのこの里派のように血で血を洗う争いが絶えることはない)

「誰って?」

「陣頭くん。その電卓の持ち主」

「ああ持ち主ね。カシオ派か……まあ、うーん別に支障ないっちゃないんだけどねー。でもカシオかー。あれ君んところにも電卓あるじゃん。それどこのよ」

「シャープっす」

「まじか!!!! それだよそれ!!!! もぉー早く言ってよ。ちょっとお待ちくだされー」

 

陣頭くんの電卓がみるみる光を失っていく。いっとき間をおいて、今度はおれの電卓が光りはじめた。

 

「えーゴホンゴホン」

 

雑な咳払いののち、厳かな声音が深夜の事務所に低く響く。

 

「……せいしゅよ」

 

「…………わが世界の、救世主よ」

 

「最初の『せいしゅよ』ってわざと切ってたんだ。自然と途切れて一部だけが聞こえてたわけじゃないんだ。その声かけ必要なんすか?」

「雰囲気ってもんがあるでしょうよ」

「雰囲気」

「そう……シャープに選ばれし、わが世界の救世主よ」

「シャープに選ばれたんじゃなくておれがシャープを選んだだけなんすけど」

「じゃあシャープを選びし救世主よ……」

「シャープを選んでるだけで救世主なれんの? 掃いて捨てるほどいるんだけど」

 

ちらと時計を見ると、もう終電の時間が近づいておりおれはあわてる。「やべ。すんません今日もう時間ないんで、明日でいいすか?」

「いやいいわけないでしょこんな中途半端な進行で。ワシここにずっといるわけ? ひとりで『救世主よ』って言い続けなきゃいけないの? 孤独みがすごいでしょ」

「いや黙ってればいいじゃないですか。いまさらだけどあんた誰なんすか」

「よくぞ聞いてくれた。ワシはプシャー国の国王じゃ」

「プシャー国」

「そう、プシャー国。名前からわかるとおり、全国民がシャープ派じゃ」

「シャープの電卓あるんだ。異世界感もっと大事にしてほしい」

「プシャー国は現在大変な危機に瀕しておる。対処に困り果てていたところ、大臣が古くからの言い伝えが記された文献を発見してきたのじゃ。その名も『梨汁プシャー伝説』。その伝説に従い、古の法をもって救世主を召喚せんとしておるところじゃ」

「ほう」

 

シャープからの梨汁プシャーっていろいろと大丈夫なのか、という懸念を抱きつつも、おれは悪くない気分になっていた。昨今流行りの異世界ものは、嫌いではないもののどうにもご都合主義が目立っていまひとつ入り込めなかったが、ひるがえって自分が魔王と戦う勇者になる(そしてモテることができる)、と考えると決して悪いものではない。ご都合主義は我が身に訪れた瞬間、望ましいものへと変貌するのだ。

ただ、現在は5月10日。いささか日が悪い。3月決算のお客さま8社の確定申告がまだ済んでいないのである。

 

「それでおれが救世主でいいの?」

「あんたシャープ派じゃろ?」

「いかにも」

「じゃあいいよ」

「なんか投げやり感がすごい」

「とにかく来てくれろ。そしてワシらを助けてくれろ。わが娘のシャウプ姫も救世主の登場を待ちわびておるぞ。かわいいぞ。年頃だぞ」

「それは大変すばらしい、じゃなくてまあそれはいいんだけどさ、もうちょっと待ってもらえません? いま仕事のキリがよくなくて」

「貴様ッ、仕事のキリとわが国の危機と、どちらが大切なんじゃ!!」

「ふつうに仕事だけど」

「だよね。ちなみにどんぐらい待てばいい?」

「まあ5月終わればだいぶ落ち着くからそのあとなら。あと20日くらいかな」

「えっ」

 

電卓の向こう側でプシャー国王が絶句する。「20日かあ、まあそうだよね、結構突然だったもんね」意外とこちらの事情に理解を示してくれる。

「まあおれも近いうちこの事務所やめようかなーと思ってたから、ちょうどいいっちゃちょうどいいんすよね。5月末に最終出社で6月は有給消化して退職かなー。まあうちの事務所で退職時の有給消化なんか認められた前例はないのだけど(違法)」

「うーんでも20日かあ。20日。20日……。まあしょうがない。じゃあちょっと一時停止機能押してもらっていいっすか?」

「一時停止機能?」

「そうそう。このシャープの電卓で、1919か0721と押すのじゃ」

「中学生男子か。まじでやめてそういうの恥ずかしいから」

「でも決まりじゃから。古からの決まりなんじゃから」

「まじか。まあ決まりならしょうがない。ああやべほんともう終電が。1919、と。押しましたよ」

 

電卓を叩きながら、スーツの上着を羽織る。明日は土曜日だが当然休日出勤である。休日手当どころか代休ですらもらえない。が、やめるとなればまあなんでもいいやという気にもなってくる。お客さんにだけはなるべく迷惑かけないように去ろう。

 

「じゃあ5月末にまた!」

 

パソコンを落とし、叫びながら入口に向かうが、ふいに強烈な力でガクンと後頭部をつかまれ引っ張られた。

「え、なになになに?」

入口から自分の机まで、ジリジリと不可思議な力に引きずられていく。「こわいこわいこわい」振り返ると自分の電卓(シャープ)が神々しいほどに強い光を発していた。どうも電卓の光が謎の力でおれを引っ張っているようだ。「電卓めっちゃ光ってるんですけど。ちょっとプシャー国王さぁーん???? なにこれ」思わず大声で呼びかける。

 

「ふふふふ、はぁーっはっはっはっはっは!!!! 引っかかったな!!!! 1919コマンドは異世界へ召喚されたことを承諾しますよ、という悪魔のコマンドだったのじゃ!!!!」

「コマンドというよりお前の性根が悪魔的」

「ふははは、このお人好しめ。救世主としてまさにうってつけ。やさしい。娘の婿にもうってつけ。ありがたし。好き」

「お前結構最低だからな。まじで覚えとけよ」

「ちなみに0721コマンドは四肢が爆散して強制的に異世界へ持ってきて、あとで再構成するやつなので、こちらは温厚なほうです」

「いずれにしろ殺す」

 

と言ったときにはすでにおれの顔の上半分が電卓に吸い込まれていた。おれは「あーあ」と思ったが、特段痛みもないしズリズリと引きずりこまれるだけなのでまあいいかと思った。お客さんの決算は気になるが、なんだかんだほかのスタッフががんばってくれるかも、というか所長てめーが自らやれ。所得拡大促進税制を自分で計算しろ。そんで要件満たさずに絶望的な徒労感を味わえ。

おれはそのような呪詛の言葉を頭に浮かべながら、しゅるんとタコのように電卓に吸い込まれた。

 

次に目を開いたとき、おれはプシャー宮殿にいたのであった。

 

 

 

 

 

疲れたので了

 

 

 

○-○ ―――――――――――――――――

<あとがき>

Twitter見てたら「異世界もので税理士のやつってないよな」というツイートを見かけて、「たしかにな。書いてみよう」と思ったのですが力尽きました。

特にこのあとの構想があるわけではなく、「確定申告無双ってなんだよ」と自分でさえも思っています。タイトル詐欺。

 

深夜の殴り書きのため、ご容赦ください。まじで仕事がやばいのにおれは何をやってるんだ。

読んでしまった方、かつてないレベルの駄文を読ませてしまったこと心よりお詫び申し上げます。

 

 

<目次と突然思いついたサブタイトル>

⇒『【第1回】税理士のおれが異世界転移して確定申告無双!? シャープの電卓が光ったときは気をつけろ』(このページ)

『【第2回】税理士のおれが異世界転移して確定申告無双!? シャープとメガネと梨汁プシャー』

 

 

 

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