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業界経験はあるとそこそこ便利だが、年数だけ重ねていてもなんにもならない。
先日こんなツイート(愚痴ですすみません)をしたところ、少し反応をいただけた。
会計事務所に長く勤めてた方から、「私わかんないから教えてくれるよね?」ってノリで面倒な会計の質問を受けるのって悲しみが深いわ…。
勤務してたとき「知識が無料」って思われるの悲しくなかったのかしら…?— 谷口孔陛(たにぐちこーへい) (@khtax16) 2018年3月28日
状況を要約するとこんなところだ。
- 最初に勤めた税理士事務所の前任の方から、 会計処理に関する質問があった
- その方は税理士事務所に24年ぐらい勤務していた方
- 3〜4カ月引き継ぎ期間があり、日商簿記2級しかなく未経験で入社した自分が、いろいろ教えてもらってとてもお世話になったことは疑いがない
税理士という商売は、世にあるサービス業と同じく目に見えない「知識」という商品を売る仕事だ。
それがどんなに必死に時間と労力とお金をかけて手に入れたものであっても、見る側にはそれが明確にはわからない。
よく言われるたとえで、
「パン屋の知り合いに『そのお店に並んでるパンちょっともらっていい?』という人はそういないのに、知識を売る商売は『ちょっと教えてもらっていい?』と気軽に言われてしまう」
というものがある。
これは非常にわかりやすいたとえで、そのとおりだと深くうなずくものの、その一方で「商品が目に見えない」ものである以上、ある程度はやむを得ないものでもあるのかもな、という気もする。
そういう人とは「わかってもらえるよう話す」か「距離を置く」ぐらいしかできないだろうし、そもそも「そう言われるのは自分の見せ方がそうなってしまっているせい」という意見もあり、私もちょくちょく言われるので「ああ、うーん、そうだよねえ」と痛いところを突かれた思いもある。
なので、そういうときは何も言わずに自分の見せ方をとらえ直す機会と思い込むようにしているのだけど、今回とても悲しかったのは、それを言ってきたのが税理士業界出身の方だったからだ。
同じ業界にいたのだから、この「知識が無料」と思われることに対する悲しみを持っていてほしかった、と感じた。
このツイートのあと、もともとこの方とお食事する機会があったので 、この質問に関するお話をしたのだけれども、またよくよく聞いてみると業界の経験が24年あると思えないような稚拙な質問が出てくることに愕然とした。
生意気と思われるのを承知で言うのであれば、おそらく2年間勤務した時点の私のほうが知識はあったと思う。
(お客さんとの関係を保つ能力や、営業の能力などは別)
この違いがどこから来るのかと考えたが、私はこの業界に入った当初から税理士になることを目指していたし、そのために必死で勉強してきたつもりだ。
一方その方は、特に税理士になるつもりもなく、私はあまり好きな言い方ではなかったが、そこの事務所の所長が「事務員」という言い方をよくしていた。
ご本人も別にそれ以上のものになるつもりはなかったようだし、それはその人の生き方の問題なのだからそこに関してああだこうだと言うつもりもない。
ただそもそもの目的意識、目標の位置が違うから、日々の仕事に対する取り組みも同じではなかったのかな、とは不遜ながら思った。
職業に貴賎はないが、明らかな仕事の負荷の違いはある。
負荷が違えば、成長するスピードもまったく異なる。
業界経験はあるとそこそこ便利だが、年数だけ重ねていてもなんにもならない。
ということを改めて感じた。
私は独立する前で6年弱の勤務経験、独立してから2年弱の経験で、合計8年弱この税理士業界にいることになる。
もちろん私より濃い8年を経験している人も多いから、これを他山の石としてより濃い経験を積むよう努めなければならない。
しかし、特に勤務している方はこれに気をつけたほうがいい。
「負荷が少ないかも」と感じることができるなら、もっといろいろな経験を積みたいと訴えるか、転職・独立すべきだ。
はたから見て負荷が少ないのに、感じることができていないのはもっとまずい。まず「自分の仕事はこれでいいのか」と問うてみるべきだ。
大した負荷のない仕事はロボットに取って代わられる可能性も高い(AIとは違い、そこはそう遠くはない)。
「業界経験24年」の空虚さを見て、そう感じた。
「一人前になるには15年は必要」と言われたら「それはあなたが無能だからだ」と返せ
ついでに書くが、私は独立してまもない頃、二代目の税理士の先生と話していて、
「業界経験6年弱で独立しました」
という話をしていたら、
「ふーん。私は一人前の税理士になるには15年は必要だと思うんだよね」
と言われたことがある。
酒の席での話ではあったが、私はつい「私は5年やれば一人前だと思っています」とムキになって返してしまった。
青い。
いま考えれば非常に青かった。
その先生にも不快な思いをさせてしまい、いま思えば申し訳なかった。
もっと大人の余裕を持ってこうお返しすればよかったのである。
「15年もかかるのはあなたが無能だからじゃないですか?」
ってね。
この話、こう言われたあとに「ムキになってしまい申し訳ありませんでした。反省している。冷静になったいまは違う意味だったんだろうなと思う」としおらしい感じでブログを更新したのだが、もう1年半が経って会うこともなさそうだしはっきり言う。
ただでさえ経験年数だけでは何もはかれないのに、そのうえ「15年」などと言うのは己の無能をはからずも証明している。
いや、もちろんこの仕事は一生勉強しないといけないし、私も自分を一人前だとは思っているものの、上はまだまだ際限なくある・いると思っている。
「一人前」の定義が違うと言われればそれまでではあるのだが、しかしそれにしたって15年はひどすぎる。
目の前のお客さんを満足させられるかがすべてではないか。
そして満足していただけたなら、経験年数何年だろうが何秒だろうがそれはもう「一人前」と認定して差し支えないのではないか。
私も「あー失敗してしまった」と思うことは今でもくさるほどある。だから学ぶべきものは学び、実践をしつづけるべきだ。
ということをいろいろ考えさせられたのでした。
ちなみに上のしおらしい感じで書いた記事は『一人前の税理士になるには何年必要なのか?独立には?』というやつです。
個人的には末尾のハイクラスジョークが見どころ。
しかし未だに思い出してイラっとすることがあるので、女々しいやっちゃなあ、と我ながら思う次第です。
でも独立したばかりの若人を目の前にしてそんなこと言う?
私は独立した人を応援できる人になるわ。決めたの。
(7年後、「15年経験しないと独立しちゃダメだよ」って言ってたらめがねを八つ裂きにしてください。髪の毛もむしっていいです。そんなめがねはハゲよ)
「役に立った!」「ニヤニヤした」など、もし「こいつ応援してやろうかな」という菩薩のごときお心が芽生えましたら、Amazonか楽天でお買い物するときに、下のリンクを踏んでからお買い物をしていただけますと私にジュース代なんぞが入ります。とても嬉しい。(なぜかメガネの検索画面が出てきますが無視してお好きなものを!)
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