「私、そんなに長生きするつもりないから」
「おれがそんなに長く生きると思う?」
これは私がこれまで何度か、複数の方から聞いたことがある言葉です。
また、私も、同様に自分がそれほど長く生きることを、具体的に想像することも、想像したこともありません。
しかしそれは、考えたくないから目をそらしているだけではないでしょうか?
今回読んだ本でそのことが痛いほどよくわかりました。
目次
『LIFE SHIFT』の紹介
今回読んだのは、リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット(訳:池村千秋)の『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』という本です。
ちなみにベストセラーになった『WORK SHIFT(ワーク・シフト)』の著者の方なのですが、そちらは未読のまま読んでしまいました。
注意点
『[感想]モチベーション3.0 続けなよ、苦しくてもさ』で初めて本の感想を書き、懲りずにまた書いてみたのですが、問題提起の部分を中心としたものすごくざっくりした内容になっています。
また、かなり濃い本のため紹介しきれないのと、本の内容が私の身の丈に矮小化されざるを得ないところがありますので、その点をご了承いただければ幸いです。
100歳の自分を、自分の子どもが100歳まで生きるかもしれないことを想像できる?
私がまず衝撃を受けたのはこの言葉です。
いま先進国で生まれる子どもは、50%を上回る確率で105歳以上生きる。
あなたに子どもはいますか?
もしここ数年で生まれ、無事に成長していってくれたとしたら、あなたの子どもはあなたがまったく想像もしていない年齢まで生きる可能性が現実的にあります。
更に言うと、子どもだけではなく、
過去200年間、平均寿命は10年に2年以上のペースで延びてきたのだ。
いま20歳の人は100歳以上、40歳の人は95歳以上、60歳の人は90歳以上生きる確率が半分以上ある。
ということなので、いま31歳の私でさえ100歳まで生きる可能性があります。
(男女に分かれていないので、男性は少し短いでしょうが)
定年のあとのことを本当に真剣に考えているか
もうこのあたりで読みたくなくて本を閉じたかったのですが、更に平均寿命と定年の話も「そりゃそうだな」と思ったためご紹介します。
モデルケースとして、
・1945年生まれのジャックさん(2016年現在71歳)
・1971年生まれのジミーさん(2016年現在45歳)
が登場します。二人の平均寿命と定年の関係は以下のとおりです。
(※)本書の設例をもとに谷口が適当につくったグラフです。
- ジャックさん … 定年後の蓄えは8年分あればよかった
- ジミーさん … 定年後の蓄えは20年分必要
単純な理屈なのですが、定年以上に平均寿命が延びているので、定年を基準にして仕事の終わりを考えると必要な生活費がものすごく増えるのですね。
しかも、ジャックさんの時代には年金の制度が持続されていますが、ジミーさんの時代には年金がどうなっているかはわかりません。
対策① 貯蓄に取り組む
これへの対策は、まず本当に必要な貯蓄額を計算し、いまから真剣に取り組むことです。
しかし、2016年現在45歳のジミーさんは、もし70代前半まで働いたとしても、所得の10%を貯蓄に回していかないと老後資金には足りない、という試算がなされています。
対策② 長く働く
更に長く働くこと、これも必要です。
しかし仮に70歳まで働いたところで、平均寿命までまだ15年間あります。
75歳まで働けばようやく平均寿命まで10年間になる、ということですね。
ただ平均寿命はあくまで平均寿命、先ほども引用したように「40歳の人は95歳以上生きる確率が半分以上」あります。
(短い可能性もあるということですが、人生設計としては短いほうを前提にしないほうがよいでしょう)
対策③ 新しい人生の設計を考える
と、おそろしくなるようなことばかり並べましたが、このあたりまでは言ってみれば導入部分です。
本書では「危機感を持つべき」というだけでなく次のようなことを言っています。
本書は、(「教育→仕事→引退」という古い)3ステージの人生を前提にした働き方を葬り去り、新しい人生の設計を提案することを目的にしている。
それにより、長寿が大きな恩恵となり、人々が活力と創造性と楽しみのある人生を送れるようにしたい。
(括弧書きは谷口が追加)
経済学と心理学の研究によれば、長寿化時代には人生の設計と時間の使い方を根本から見直す必要があるのだ。
そうすることではじめて、長者を厄災ではなく、恩恵にできる。
つまり、考え方を転換して新しい時代に対応しよう、ということですね。
また、特に日本は、前例のない規模の長寿化を世界に先駆けて迎えようとしており、
過去のモデルは役に立たない
未来は過去の延長線上にない
ということも書かれています。
現代を生きる我々はそのことを胸に置いてこれからのことを見つめる必要があるのでしょう。
問題提起のあと
本当は上記の二人だけでなく、1998年生まれのジェーンさんも出ていて、「ジミーとジェーンのための新しい人生のシナリオを検討する」と続きます。
つまりここまでは問題提起であって、「これからを生きる我々が、我々の子ども達がどう生きるのか」も考えようというのが本書の趣旨です。
そのあとの内容としては、
- 雇用の未来 ― AIなどの影響によって、働き方はどう変わっていくか
- 見えない資産 ― 我々は何を身につけていくべきなのか
- 新しいシナリオ、ステージ、お金の考え方、時間の使い方
- 変革への課題 ― 自分自身、教育機関、企業、政府の課題
といったものが縷々(るる)述べられています。
全部はとてもまとめきれないので、私が気になった仕事についてだけまとめます。
これからの仕事はどうなるのか?
一番私が不安を感じているのは、何よりAI(人工知能)が発達することによって仕事がなくなるのではないか、ということ。
それについて本書で言っているのは、
なくなる仕事、失われる雇用はやはりある
ということ。
これはやはり避けられないでしょう。
しかしその一方でこういうことも言われています。
ロボットが人手不足を救う
特に日本はこれから更に高齢化社会が進んでいきます。
いまでも「人手不足倒産」なんて言葉が出て来るようになりましたし、上でも長く働くようになると言ってはいるものの、健康状態などで物理的に働けない方ももちろん増えてくるでしょう。
そのときに生じる人手不足を補うことができるのもまたロボットだろう、ということが著者の主張です。
テクノロジーが雇用を生むこともある
また、テクノロジーの進歩によって雇用が奪われる、という面ばかりが叫ばれていますが、テクノロジーが新しい雇用を生むこともあります。
このあたり著者の主張と反対意見とが載っていてちょっとわかりにくいので、要約しますと、
■ たとえば工場を機械化したことにより、工場で働く人は減少したが、その機械をつくる人、操作する人、整備する人の雇用は生んだ
◇ それは前時代的な話で、将来はそうはいかない。たとえばフェイスブックがワッツアップを買収した当時、ワッツアップの買収金額はソニーの株式時価総額にほぼ匹敵していたが、ソニーの従業員が14万人であるのに対しワッツアップの従業員は55人だった。
■ 企業単体でとらえるのではなく、社会全体でとらえるべき。ワッツアップはインターネットを前提としており、そのインターネットがつくり出している雇用は莫大な数にのぼる。
(■が著者、◇が反対意見)
というような話がこのほかにも色々載っています。
要は経済学の観点から見ると、状況はもっと明るい。なぜなら、
- テクノロジーによって補完される雇用が生まれる(上の機械の例のように)
- 生産性が上がり、経済生産を増やして雇用が増える効果もある
- いままで予想もされていなかった製品やサービスが誕生することにより、それに関連する雇用が生まれることだってある
ということのようです。
感想を言うとつまりわかんない
こういう話を聞いたときに私が思うのが、
「もしその機械化された工場に、そこでの仕事を天職だと思う職人さんがいたとしたら、その人がそこでの雇用を失って好きでもない機械を操作する仕事をする可能性もあるんだよな」
ということ。
つまり、
- もし別の雇用が生まれたとしても、我々の多くはなんでもいいと思って働いているわけではない。
- でも需要がないのに働きつづけることはできないから、もし自分が満足できている仕事の需要がなくなったときは、好きでもない仕事をしなくてはいけない可能性がある
ということです。
だからあと40年も50年も働きつづけていく可能性があるのなら、いまから、
- 誰かの「困った」を探す努力、見つける努力、手を挙げる努力をしていかなければいけない
- 自分に何ができるのか、強みを探って磨いていかなければいけない
- 時代の変化にアンテナを張って、そこで自分がどう生きるかを考えつづけなくてはいけない
ということを積み重ねていくしかないんだろうなあ、という平凡な結論に達しました。
未来がどうなるかは誰にもわかりません。
30年先を言い当てられる人もいないでしょう。
私は死んでいるかもしれないし生きているかもしれない。
わからないから、いま、自分にできることを探してしていくしかないんでしょう。
『LIFE SHIFT』の感想まとめ
というわけで、長くなってしまいましたが、まとめると、
- あなたもあなたの子どもも100歳まで生きる可能性があるんだよ
- だからこれからどう生きればいいか、一緒に考えよう
というような内容です。
本書は、昨日本屋でたまたま目にしまして、Kindleが2016.10.21に販売開始だったため、先に読んで概要だけ書いてみるかと思ったらこんなことになってしまいました。
我々は変化のなかにいます。
そして、「これまではこうだったからこうなる」が通用しない、まったく一変してしまうかもしれない時代に生きています。
自分にできることはそう多くはありませんが、考えつづける努力は放棄しないようにしたいものです。
「役に立った!」「ニヤニヤした」など、もし「こいつ応援してやろうかな」という菩薩のごときお心が芽生えましたら、Amazonか楽天でお買い物するときに、下のリンクを踏んでからお買い物をしていただけますと私にジュース代なんぞが入ります。とても嬉しい。(なぜかメガネの検索画面が出てきますが無視してお好きなものを!)
▷Amazonでお買い物
▷楽天市場でお買い物