変態忍者の名をほしいままにしていた15の夜

 

 

ごきげんよう。変態忍者ことめがね税理士の谷口(@khtax16)だ。

 

唐突で恐縮だが、私に人生ではじめて彼女ができたときの話を聞いてほしい。

 

あれは、私が15歳のときだ。

 

私が通っていた中学校では、中学3年生の6月に京都へ修学旅行へ行くことになっていたのだが、そのとき同じ班になったのが彼女だった。

 

それまでまともに話したことはなかったが、別のクラスの友人が彼女のことを「かわいい」と評するのを聞いたことがあった。

なるほど見てみるとたしかにかわいい。

特に笑顔が印象的で、まさに「花が咲く」と形容するのがふさわしい、まわりの空気をパッと和らげるような笑顔を持つ女の子だった。

 

彼女と話すようになったのは、その「同じ班になったこと」が直接的なきっかけだったわけだが、かといってそんなに仲良く話せるわけでもなかった(当時の私はとにかく内気・陰気で、女の子に気やすく話しかけることなどできなかった)

 

一気に距離が近づいたのは、修学旅行中のバス移動のときだ。

話の端緒は忘れたが、たまたま隣り合った彼女と私とは、なぜかL’Arc~en~Ciel(以下ラルク)の話になった。

 

私の世代では、当時GLAYとラルクの人気はすさまじく、私は仲のいい友人が好きだった影響でラルクにハマりはじめた時期だった。

 

彼女もまた相当のラルク好きで、私が「インディーズ時代のアルバムを買った」と告げると、彼女は

「えーっ、ほんとに!? あの曲めちゃくちゃいいよね!!」

と、もしも釣りだったら「魚が自ら釣られに来たのかな?」と思うような勢いで食いついてきた。

 

 

ここで申し述べておきたいのは、

私がめちゃくちゃニワカファン

だったことだ。

 

 

そのアルバムも、私は「えっ、インディーズ時代のアルバム持ってるの?」と驚かれたいがために買ったのであって、まだろくに聞いてさえいなかった。

(買ったときは彼女がラルクファンだと知らなかったが、誰かが驚いてくれさえすればよかった)

 

そのため私は、彼女のその熱い想いを共有することができず、

「うん、いいよね、あのサビがね、いいんだよね。あと歌詞も。深い」

一切中身のない話の合わせかたをした

 

しかしこれは彼女にかぎらず、熱くなるとまわりが見えなくなる人間という生き物全般に言えることだと思うが、意外とバレずに済んだ。

 

われわれはラルクの話で盛り上がり、バスで降りる駅も忘れており、同じ班の友人に注意されてあわてて降りたようなありさまであった。

 

生粋のチェリーボーイであった私は、これまで女の子とこんなに盛り上がって話せたことはかつてなく、「たとえ一回でも盛り上がって話せた」という事実だけでもう彼女にぞっこんラブ だった。

 

思春期チェリーボーイの暴走力というのはそれはもうすさまじいもので、修学旅行後、彼女と話す機会がまったくなくなってしまった私は「また彼女と話したい!」と思った結果なぜかいきなり告白することを決意した

 

人生ではじめての告白である。

(同じクラスなんだからガンガン話しかけるか、まずはデートのお誘いでもすればよかったのだが、チェリーメガネにはその勇気がなかった。告白のほうが勇気いるだろうが)

 

ここでひとつだけ自分をほめてあげたいのが、ちゃんと彼女と会って告白した点である。

公衆電話から彼女の家に電話をし(当時はまだ携帯電話が普及段階で、持っている人のほうが少なかった)、彼女に家の前に出てきてもらい、赴いた私はこう言った。

 

「好きです。つきあってください」

 

と(私は告白するときにかぎりそこそこ男らしく振る舞える)

 

まあ正直ダメでもともと、玉砕を思い描きながらの告白だったわけだが、意外にも彼女も修学旅行のときの印象がよかったらしく、恥じらいながら、

 

「はい」

 

とうなずき、笑ってくれた。

 

私は彼女の笑顔が見れたことに嬉しくてたまらなくなり、「ありがと、それじゃまた学校で!」となぜかすぐその場を去り、告白の結果を近くで待っていた友人のところへ走っていった。

 

「うおおおおおメガネやりましたぁぁぁぁ」

 

と叫びながら。

 

そのとき彼女を「かわいい」と評していた友人もおり、ブサイク根暗野郎の私が当然ふられると思い込んでいた彼は絶句し、「そんな、まさか」と膝をついて涙を流した。

 

私はそんな彼の肩にそっと手を置き、そっと私のメガネをかけてやった。

 

しかし私の中学生のときの頂点はこの瞬間で、あとはくだる一方であった。

 

具体的には、

 

・彼女と映画に出かけるも、誇張でなく二言三言しか話をせず、マクドナルドで気まずい食事をする

・彼女とデートしたのはこの映画のみ

・なんだか恥ずかしくなり、学校ではますます話せなくなる

・手をつなぐこともできず、約半年が経ったクリスマスの日にふられる

 

といったありさまだった。

 

いま考えても、もっと相手に興味を持って、いろいろなことを聞いて、耳を傾けるだけでよかったのにと思う。

 

--- ○-○ ---

 

ということをふいに思い出したのだけど、なぜ思い出したのかといえば、先日 この修学旅行で一緒の班だった男子三人 で飲む機会があったからだ。

(KくんとMくんと私)

 

Mくんとは10年以上会っていなかったのだけど、会えば当時の空気を思い出すもので、われわれは和やかなひとときを過ごした。

 

しばらくいろいろ話していると、話は自然、同じ班であった私の元彼女の話となった。

 

Kくん「いやあ、なつかしいなあ。おれたちがいろいろお膳立てしたのに、谷口あっさりふられちゃって」

 

Mくん「あれから彼女とは会ってないの?」

 

めがね「いやもう全然。中学卒業してからまったく会ってないよ」

 

Kくん「今日飲むことになったからさあ、家のなか探してたら、こんなものが見つかったんだよ」

 

と、Kくんが一枚の写真をそっと机に置いた。

 

それを見て、私の胸はどきりと高鳴った。

 

その写真には、当時の彼女が写っていた からだ。

 

 

 

 

中学校の校舎から、窓ごしにこちらを見て手をふり、あの笑顔で笑いかける彼女。

 

私は郷愁にぐっと胸を締め付けられた。

 

一番に思い出したのは、当時まったくうまくやれなかったという後悔と、彼女への申し訳なさだ。

 

めがね「うわあ・・・こんなのよく持ってたな・・・そう、こんなふうに笑う子だったな・・・」

 

写真を持ってきたKくんは、ふふっと笑う。

 

Kくん「なつかしいよな。このときは、みんなでバスケしたり、ときどき遊んでたよな」

 

Kくんは遠い目をしてつづける。

 

Kくん「谷口、この写真撮るとき 彼女の足のニオイ嗅いでたよな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嗅いでねえよ。

 

 

いやいや一瞬遠い目をして考えちゃったよ。

 

「ふふ、なつかしいな、彼女の顔は忘れてしまっても、足のニオイだけはまだはっきりとおぼえてるよ」

 

とかふんわりした流れで言いそうになっちゃったよ。

 

え、どういう状況なの?

 

 

 

こんな感じ??

 

手もつないでないのに足のニオイは嗅いでる関係とかある?

 

 

どんな変態カップルだよ。

 

いや、変態なのはおれだけか?

 

と、私が否定しつつも混乱していると、Mくんが助け舟を出してくれた。

 

Mくん「大丈夫大丈夫! バレないように嗅いでた から、きっと隠せてるよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから嗅いでねえよ。

 

 

えっ、本人にバレずに足のニオイって嗅げるもんなの??

 

図にしたらこういうこと???

 

 

 

くんくんしつつもニンニンってか。

 

 

やかましいわおれは忍者か。

中学3年生にして変態忍者だったのか当時のおれは。

 

「足のニオイを嗅ぐ中学3年生」から距離を置いて、一旦ゼロベースで話し合わない????

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、えー、以上です。

 

実はこの話、昔から私のブログを見てくださっている方はわかるかもしれませんが、『初デートでホラー映画はやめておけ 膝の骨に屈する編』で書いた話を若干リライト(書き直し)しました。

 

当時はまだふざけた話をまれにしか書いていないころで、読んでくださった方からこの「変態忍者」というフレーズを言っていただけることがあるのですが、当時は書き方がよくわかっていなかったため、後半がとっ散らかってしまっています。

 

後半は後半で嫌いではないのですが、「そのうち『変態忍者』を主軸に据えて書き直したい」と思っていたら、「くんくんからニンニンを図で表してみよう」というよけいな思いつきが天から降りてきまして、とりあえずつくってみたら思いのほか満足したのでそのままあげてみた次第です。

(友人との話のシチュエーションはちょっと変えました)

 

この話の教訓のひとつに「変態忍者はふられる」というものがあり、全国の青少年にはこの教訓を胸に、雄々しく己の性癖を追求していってもらいたいなと、ここ東京から願っています。

 

めがね。

 

 

 

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