【第3話】税理士のおれが異世界転移して確定申告無双!?【おふざけ小説】

 

~前回のあらすじ~

ブラック税理士事務所で深夜に残業してたらシャープの電卓を通して異世界のプシャー国国王に騙されて召喚された。殺す。召喚後に話してたらめっちゃコケにしてくる。殺す。

⇒前回『【第2話】税理士のおれが異世界転移して確定申告無双!? シャープとメガネと梨汁プシャー』

 

 

「とにかく、国の危機だってんだろ。どんな危機なんだよ」

気を取り直して話題を修正する。国王もすっくと立ち上がり、大臣とともにキリッとした顔立ちに瞬時に変わった。このあたりはさすが国王といったところか。

 

「そのとおり。放っておけば、わが国は滅びてしまうかもしれん。しかし、いったいどこから話したらよいものか……」

「やっぱりあれか? 魔王が現れて攻め込んできてるとかそういうことか?」

「えっ」

「えっ」

「そっちの世界って魔王いんの?」

「え、いないの?」

「なにそれこわい」

「いやうちの世界にもいないけどさ」

「じゃあなんで言ったん? ねぇ、なんで魔王とかって恐怖のワード出して国王のことびびらしたん? ちょっと漏れたんだけどどう責任とってくれるん?」

「いやこっちの世界では異世界に行くと魔王がいるみたいなセオリーがあって、ってお前下半身びちょびちょじゃねぇかよ! 『ちょっと』の概念が崩壊してんぞ」

「本気出したら大きいほうも行けるからね」

「本気の方向性を膀胱締めるほうに持っていけ。魔王って聞いただけでこんなにびちょびちょになるぐらいのチキンハートなの? 一国の王とかよくできたねちょっと大臣! 王さまの着替え持ってきてあげて!」

 

大臣がさっと着替えを持って現れ、玉座のうしろでズボンを替えはじめた。パンツを脱がんとかがむときに国王のでかいケツが玉座の脇からひょっこり顔を出す。ひっぱたいてやりたい衝動にかられたが、濡れているし臭くなりそうなので我慢した。国王はケツをひょっこりはんさせたまま、大臣が渡したタオルを使い乾布摩擦のように猛烈な勢いでケツを拭いている。手際のよさに日頃どれだけ漏らしているのかと疑う。別の従者(メガネを着用したメイド)がモップを持ってやってきて国王が漏らした床の水分を拭き、ペコっと頭を下げて去っていった。もはや介護職ではないか。

 

「ふう。もうワシをびびらすのやめてよね」

「ごめん、そんなにびびらせたつもりもないんだけど……」

「でも救世主どんは武道の心得もあるってことね。万が一魔王(笑)が出てきても倒す自信があるというのは心強い」

「そんな心得ないよ」

「マジでなんで言うたん? ねえ、じゃあなんで魔王のこと言うたん? 魔王がきました、わが国ピンチです、救世主どんが出ていったけど秒殺でした、とかそういうことだよ救世主どんがさっき言ったのは。ワシをびびらして楽しいの? さっき漏らして膀胱がカラになってなかったらまた漏らすとこだったよ?」

「どのみち漏らしはするなよ。いえ、あのですね、私のほうの世界のセオリーですと、異世界へ行くとスキルといって特殊な能力を身につけて大活躍できる、的なのがあってですね……」

「なんの努力もしてないのに?」

「努力する話もありますが、まあ、はい、自動的に与えてもらえる話もあります……」

「は~あ、救世主どん(笑)がそんな夢物語を信じる人だったなんて国王ショック」

「おれの呼び名のほうに(笑)をつけるな。魔王(笑)は存在しないものを出した負い目もあって黙ってたけど、勝手につけられたおれの呼び名のほうには異議を唱えたいそもそも救世主どんという呼び名も認めてないからな」

 

進展しない話にしびれを切らしたのか、ゴホン、という大きな咳払いが響いた。音のほうを見ると大臣が丸めた大きな紙を持っている。

 

「どうした大臣」

「陛下、救世主どん(笑)はこの世界のことを何もご存じないかと思い、わが国の課題をこちらの紙にまとめて参りました」

「おお、さすがは大臣じゃ! どうにも、どこから話してよいのかわからない複雑な難題じゃからのう。わが国の地図を見せるなり課題を図解にするなりしたほうが救世主どんもわかりやすかろう」

 

メガネを順次叩き割っていこうかと思ったが、話が進まないので呼び名についてはあきらめることとしつつ、大臣の持っている紙を見た。おれのいた世界の基準で言うと、A3サイズぐらいの紙を丸めているようだ。大臣は「では」と声を張り上げ、フンスと鼻息を放出するや丸めた紙を胸の前で大きく広げた。

 

 

金がない

 

 

地図も図もなにもなくただデカデカとそう書いてあった。

 

「……これは?」

 

国王と大臣のほうを見ると、二人が腹を抱えて爆笑している。

 

「ウヒヒヒヒヒヒ、金が、金がないってwwwwww」

「なんかわかりやすく図にしていると思った??? 残念でしたwwwww」

 

床に転がる国王にまたがって無言でメガネを割り、続いて大臣のメガネを割る。「冗談なの? ほんとに金がないの?」

 

「ひぃぃぃ、すみません、ほんとにお金がないんです」

「えーと、国全体が貧しいってこと?」

「いや国全体はまあそこそこ栄えてます。人口も増えてきてるし。国っていうか、税金が少なくていろいろ整備ができてないんです」

「税金。いまどんな風に取ってんの?」

 

先ほどまで大臣が応答していたので、ちらりと国王を見る。国王は割れたメガネのままきょとんとした顔をしている。

 

「どんな風にって?」

「えーと、稼ぎに応じて取ってるのか、資産がどれだけあるかに応じて取ってるのか、人数に応じて取ってるのか、とかそういうこと」

 

国王は首をかしげる。「えーっと、気分?」

 

「気分で税金取るってなんだよ」

「いや、なんか儲かってそうだったらじゃあこれぐらい納めてね、って」

「儲かってなさそうだったら?」

「今年はいいよーって」

 

顔をしかめて大臣のほうを見ると、大臣がそっと耳打ちしてきた。

 

「いえ、実は先代の国王が非常に優秀だったのですが、租税に関しては苛烈でして、現国王が引き継いだあとに『かわいそうだから儲かったら納めてね』という仕組みにしてたらあっという間に国にお金がなくなりました」

「それでこの広間はほとんど物がないの?」

「はい、ほとんど売り払いました」

「じゃあ税金上げればいいじゃん」

「それが、『でも儲かってない年にまでたくさんの税金を払わすのかわいそうじゃない? ワシ嫌われたくないよ。みんなのアイドル国王でいたい』みたいに申しておりまして」

 

二人で国王を見る。国王はメガネを替えつつバチコンとウインクをしてきた。さっきまでびしゃびしゃに漏らしていた中年とは思えぬ態度。アイドルを名乗るなら膀胱を鍛え上げて「トイレには行きません」と言えるぐらいの気概を持て。

 

「はあ、そういうことね。国民の稼ぎはどうやって把握してんの?」

「適当に見て回って、適当に聞いてます」

「口頭で?」

「はい。『儲かってるか確認おじさん』という役職を各地に設けておりまして。あと噂話で『あそこは儲かってるらしい』って聞いたりですね」

「役職のネーミングセンスのなさにおれが漏らしそうだわ。わかった。じゃあまあ最適かはともかく、完全におれのこれまでの経験によるものだけど」

 

おれは二人を見て高らかに告げた。

 

確定申告 をしてもらう仕組みを整えましょう」

 

「確定申告??」

 

二人が同時にオウム返しをして、顔を見合わせる。これがおれの確定申告無双のはじまりになろうとは、このときはまだ夢にも思わないのであった。

 

 

 

一旦了

 

 

 

○-○ ―――――――――――――――――

<あとがき>

ほんとは経済の発展の歴史や、日本における現在の税制のはじまりを勉強してからそれをモチーフに図解なども入れつつ書いていこうと思っていたのですが、時間と教養がないため設定ガバガバで推し進めてゆくことをこのたび決断いたしました。

詳しい方ごめんなさい。

「こうしたらいいんじゃない?」などありましたらご教示いただけますと幸いです。

あ、クソリプは間に合ってますんで大丈夫です。

 

設定はさておき、白色申告からはじまって青色申告をどうやるのかとか日本の税制の解説的なことをする予定のため、ボケやツッコミも減少していくことが予想され、それはそれでなんのために書いているのかよくわからなくなってきています。

「そんなのいいからひたすらボケとツッコミをしろ」というご意見があるようでしたら方針転換しますので言っていただけると嬉しいです。

あ、クソリプは間に合ってますんで大丈夫です。

 

あと今回でシャウプ姫を登場させるはずが登場させられませんでした。ご期待いただいていたごく一部の1名か2名の方も申し訳ございません。オッサンが漏らした話で終わりました。

ちなみにシャウプ姫は「シャウプ勧告」という税金に関連する用語が元となっており、シャープさんは関係ございません。「電卓はシャープ派」「シャープ国」に関しては完全にシャープさんがモデルであり、無許可です。伏してお詫び申し上げます。

シャウプ姫、次回は必ず登場します。まったく期待しないでお待ちいただけると幸いです。

 

 

 

<目次とサブタイトル>

『【第1話】税理士のおれが異世界転移して確定申告無双!? シャープの電卓が光ったときは気をつけろ』

『【第2話】税理士のおれが異世界転移して確定申告無双!? シャープとメガネと梨汁プシャー』

⇒『【第3話】税理士のおれが異世界転移して確定申告無双!? 確定申告無双のはじまりと国王のチキンハート』(このページ)

 

 

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