私がひとり税理士を選んでいる理由 要はAIや時代の変化にびびっているのであった

 

 

こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。

 

昨日お客さまと打ち合わせをしていて、

「谷口さんは今後どうしてくんですか? 事務所を拡大するんですか?」

という話になりました。

 

そのお客さまは、具体的に書くのもよくないので多少ぼかしますが、美容室を経営していて、今後少しずつ複数店舗を目指そうとお考えの方でした。

 

そこで私は、

「いや、当面ひとりでやっていこうと思ってて」

と答えている最中ハタと気づきました。

 

自分が、

  • この税理士業界の行く末をまったく楽観視していないこと
  • そして人を雇い、拡大するほどに軌道修正がしにくくなることを恐れていること
  • さらに人を雇った場合に、もし業界が滅びたらその人に対する責任のとりようがないことを恐れていること

を。そしてだから「拡大をする」ことに非常に消極的な思いを抱いているのだということを。

 

前にも書いたことがある気もしますが、私の考えるこの「税理士業界の行く末をまったく楽観視していない」という点について、つらつら書いてみたいと思います。

(すみません長文です)

 

私がひとり税理士を選んでいる理由 2017年9月20日時点

 

独立した理由 サラリーマンが安定しているとは思えなかった

『独立して1年経ちました はじめての独立記念日』で、サラリーマン時代のことを「息苦しかった」的な感じで書いていますが(あくまで私は)、私は、もともと「人が何かの決断をするときには理由・動機が複数ある」と思っています。

(あくまで私は、です。決断するにあたって、理由や動機が複数なかったことがほぼないので)

 

 

私が独立した理由もやっぱり複数あって、そのうちの一つに、

税理士業界でサラリーマンを続けていても、将来くるであろう荒波(時代の変化)を乗り越えられないのではないか

という不安があった、こともありました。

 

サラリーマンかフリーランスかで議論になるとき、「サラリーマンの最大の利点は安定していること」などと語られることはよくあると思いますが、こと税理士業界にあっては、

「サラリーマン = 安定している」

という図式が成り立つとはどうしても思えなかったのですよね。

 

当ブログで何度か言及していますが、AI(人工知能)が発達などして、「10年先にはなくなる職業」でよく上位に挙げられるのが税理士業界であったからです。

 

 

もし本当に仕事がなくなった場合、時代の流れに対応できるのはサラリーマンか独立している人か

エストニアの暗号通貨(仮想通貨)の影響か、最近妙に反響をいただいているのですが、『税理士が消滅する日 エストニアの現状から考えたこと』という記事で、

日本で税理士が消滅するのかは、税制を簡素化できるかが重要なポイントになる

みたいなことを書きました。

 

サラリーマン当時はこのへんも勉強していなかったので、漠然と、

「AIが発達して、いつか税理士という商売が成り立たなくなった場合、そのとき自分と家族が生き抜いていくには独立して『ビジネスをする力』を少しでも鍛えるほかないんじゃないか」

と考えていました。

 

もちろんサラリーマンでありながらいろいろ行動できる方も多いのでしょうが、私の場合はどうしても甘えがあり、漠然と不安に思うばかりで「時代の変化に対して積極的に勉強していこう」という行動を取ることができていませんでした。

 

なので「切迫感を持ち、自身の行動を促すためにも独立」というのは私にとって独立の強い動機のひとつでしたし、実際に独立した今となっては、サラリーマンだったときとは危機感の抱き方や行動の取りやすさがまったく違う、ということは感じています。

 

 

自分はAIに対して過剰に不安を抱いているほう

とはいえ、自分で言うのもなんですが、私はAIに対して過剰に不安を抱いているほう、だと認識しています。

 

同じ税理士や、士業であっても、

  • AIをうまく利用する側になればよい
  • コンサルなど「人」であることが価値になるサービスは絶対になくならない
  • 言われているほどAIは発達しないのでは

といった考えをお持ちの方は多いです。

 

ただ、そういった考えに対して思うのが、

それってこんな感じで、「自分の想像できる範疇に、勝手にテクノロジーの限界を置いている」のではないか、ということです。

 

 

実際のテクノロジーってこうだと思うんですよね。

このように、

  • 自分が想像もしていなかったところ
  • 自分が想像さえできないようなところ

にテクノロジーの限界(というか行く先)ってあるんじゃないか、という気が私はするのです。

 

「だってiPhoneってこうじゃなかった?」的な。

想像の外から来たものじゃなかった?

 

電話は?

インターネットは?

電気は?

飛行機は?

機関車は?

自動車は?

 

文明というものが始まって、いままでずっと、当時の人がまったく想像もしていなかったところから新しいものが生まれてきているわけでしょう。

AIは現時点で想像の範疇にあるものから、その外側へ行こうとしている点で異なるのかもしれませんが、個人的にはどうしても「自分の想像できる範疇に、勝手にテクノロジーの限界を置いている」んじゃないかと思えてしまうのです。

 

 

美容師は結構安泰だと思う

そういった意味で、私は「AI恐れるほどのものじゃない説」にどうも懐疑的です。

理論物理学者のホーキング博士や、低コストでロケットを飛ばしているスペースX社のイーロン・マスク氏は、「人類滅びる」ぐらいまで言っててかなり危機感を抱いている方たちです。

 

私は詳しくないのでAIがどこまで行くか、についてはなんともわかりませんが、ただ「コンサルは大丈夫」も正直怪しいんじゃないかなあという感覚を持っています。

コンサルの目的って、要は売上を上げることであったり、経営や資金繰りを改善することであったり、そういったものであるわけで、「その目的が達成できるなら人でもAIても関係なくね?」って人は一定数出てくるんじゃないかと。

(コストがどれぐらいになるかの問題もありますし、「人がいい!」って方がいなくなるとも思えませんが)

 

それに比べると、美容師は直接髪をさわって切るわけで、コミュニケーションとして「人間である優位性」はかなり強いんじゃないかと。

髪って自然と伸びますしね。

この「髪は自然と伸びる」「そして切らないわけにもいかない」って、ビジネスとしてものすごい強みなんじゃないかと思うわけです。

 

もちろん「人に切られないほうがいい!」って方もいるんでしょうけど、なにかしらの髪を切るロポット(人型かアームだけか問題もあるんでしょうが)なりの物体は必要でしょうし、コンサルなんかよりよっぽどなくなりにくい仕事だよなあ、と考えています。

 

 

いえ、このへん完全に私の独断と偏見です。気を悪くされる方がいらしたら申し訳ありません。

 

書いて思いましたが、私は「コンサルとしててっぺんを目指す!」というような気概がないからこう思っている、というのもあるかもしれません。

 

 

 

「正体のわからないものに対する不安」も相当量ある

といったことがあり、私は、

  • 税理士業界が20年~30年先も安泰だとは考えていない
  • その税理士業界で拡大を目指すことは、将来の自分の舵取りを著しく制限してしまうことになる
  • 同時に、そのとき雇っている社員への責任を果たせない日が来ることを恐れている

という気持ちがあるんだ、と冒頭のお客さまとの会話で思い至りました。

 

ただのたられば(仮定の話)ですが、これが先に挙げた美容室など、別の業界であったなら違う結論になった可能性もあるように思います。

(そもそも美容室は人を雇うことがほとんどですが)

 

という気持ちに自分で気づいた一方で、私がAIや技術の発達に対して自分でも「過剰な不安」と言っているのは、正体がわからないものに対する不安、も相当量あるであろうからです。

結局のところ、私は、「AIがどんなものか・どんなことができるのか、いまひとつわかっていない」のです。

 

私は独立してから、お客さまの「お金が尽きることを不安に思う気持ち」がすごくよくわかるようになりましたし、同時に「収入と支出を数字に落とし込むことで、お金が足りるのか足りないのかがわかり、漠然とした不安が大幅に軽減する」ということも税理士という仕事柄理解しています。

 

人間は見えないものに対して大きな不安を抱くものです。

見えない霧のなかに怪物がひそんでいたとしたら、私はきっと腰を抜かしてしまうでしょう。

 

しかしいざ霧が晴れてみると・・・・

 

 

かわいいネコちゃんかよ!!

 

 

 

 

と、いうように、姿が明確になることで不安が著しく軽減することは往々にしてあります。

(この図がつくりたかっただけである)

 

私は現在この「霧のなかにAIという怪物の姿を想像している」状態であるとも言えるので、もう少しいろいろ勉強して、その正体を自分なりに掴む努力が必要なんだろうなあと考えています。

 

 

経営者の社員への責任とは

ところで本論とはずれますが、私は上記で、

「社員への責任を果たせない日が来ることを恐れている」

と書きました。

 

これはつまり、たとえば20年後に仕事がなくなり税理士事務所を閉めることになったら、経営者として、そのとき社員として働いていたくれた方々に申し訳が立たない、という状況を想像しています。

 

この点、人によっては、その業界を選んだのも、その会社を選んだのも、その人本人の責任である、と言うこともできるでしょう。

 

ただこれは働く側・雇用される側としてはそのような気概を持つべきだと考えていますが、経営者が人を雇うにあたっては、

  • その人の人生に対しての責任
  • その人の家族に対しての責任

がまったくないとは言えないのではないでしょうか。

 

何も「全面的な責任を負え」という話ではなく、ひとりの経営者として、「その人や家族の人生の一端を背負う」ということ。

それが「人を雇う」ということに対する最低限の覚悟なのではないか、というのが私の考えです。

 

「業界傾いた。あとは知らね。それぞれで勝手にやって。おれも大変なんだ」

ではあまりにも無責任です。

拡大を目指すなら、それを見据えて耐えうる仕組みをつくるか、あるいはそもそも少数でやるか、という選択がこれからの時代は必要なのではないかと。

(いろんな方面に押し広げる気もないので、税理士業界に限っています)

 

 

 

 

おわりに 税理士を目指している方へ

いろいろ書きましたが、いま税理士を目指している方に。

 

AIがどうなるかはわかりませんが、税理士という職業の行く末は、上でも書いたように日本の場合は税制が簡素化されるかがものすごく重要、というのが私の考えです。

特に日本のような社会では、テクノロジーがどうなろうが、10年~15年は税理士という職業は一般的に危惧されているよりも残っているように思います。

簡素化したら税理士はもとより財務省もとんでもない影響を受けるでしょうから、ものすごく抵抗するだろうことは想像にかたくないですし。

(年数はものすごく感覚で書いてます)

 

私は「日本の税制は簡素化すべき」派ですが、かといって正直に言うと「じゃあ明日から簡素化するよお☆」って言われたら困ります。ちょっと泣きます。妻にふられます。

 

もしいま税理士を目指している方がこれを読んでくださるなら、

  • 一刻も早く合格してしまうこと
  • 少しでも多くの経験を積むこと
  • ひとつの業界だけでなく多くのことにアンテナを張ること

がすごく大切なのではないでしょうか。

 

あと酷なようですが、もし「うーん、これ無理だな」と思ったらスパッと試験をあきらめてしまうことも一つではないかと。

しがみついて惰性で受けつづける価値のあるような、夢と希望にあふれた先行きでもないかなあと。

試験勉強中って本当にほかのことできないですから、中途半端に取り組むぐらいなら全然別の勉強(自分が興味を持てることを!)したほうがいいのでは、と思ったりなんだり。

 

まあ多分「夢と希望にあふれた先行き」はほとんどの業界ではありません。

自分なりに考えてやっていくしかないのでしょう。

長文のわりに締まらない終わりで申し訳ありませんが、私なりの「ひとり税理士を選んでいる理由のひとつ」でした。

 

AIは、かわいいネコちゃんだ!!!

 

 

 

この話のつづき

つづきとして、後日調べて考えたことを書きました

『「シンギュラリティは起きない説」もある 漠然とした不安への特効薬は「とにかく調べる」』

 

 

 

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