こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。
法律用語というと語弊がありますが、法律の条文によく出てくる言葉として、
- 及び
- 並びに
- 又は
- 若しくは(もしくは)
といった言葉があります。
前々から思っていたのですが、このうち「及び」「並びに」なんかは「誰にでも通じる言葉」ではなくなっているんじゃないかなあという気がしています。
目次
難解な専門用語は使い分けが必要なのでは
「and」的な意味合いの接続詞
まず「and」的な意味合いの接続詞として、
- 及び
- 並びに
- 乃至(ないし)
があります。
乃至(ないし)の意味と使い方
「乃至」は法律用語というわけでは(多分)ありませんが、契約書なんかではちょくちょく目にします。
意味としては2つあり、
- 「500乃至600」のように「500から600にかけて」という意味
- 「レンズ乃至フレーム」のように「レンズまたはフレーム」という意味
ということで、ちょっと性質の違う使われ方をすることがあります。
(いま考えたら「and」のほうにいれるのもどうなのか)
これはもう現代的には「まぎらわしい言葉」と言わざるを得ないんだろうなあというのが私の感覚です。
及び・並びにの意味と使い方
「及び(および)」「並びに(ならびに)」も、意味としてはどちらも要は「と」みたいな感じです。
たとえば、
- キャベツ及びレタス並びにニンジン
という言葉があった場合、
- キャベツとレタスとニンジン
- キャベツ、レタス、ニンジン
- キャベツやレタス・ニンジン
などと言い換えても意味としては同じことです。
ただ法律用語として使うときには厳密な意味合いがあり、上の例だと、
- 大きい分類としてはみんな野菜 ⇒ キャベツ、レタス、ニンジン
- 小さい分類を「並びに」でさらに分けることが可能
⇒ キャベツとレタスは葉菜
⇒ ニンジンは根菜
といったような使い分けをしたりします。
このへんの分類を曖昧にするわけにはいかないので、法律用語としては間違いなく必要なのですが、しかしその感覚をお客さま相手に話すときにも持っているべきかというと、私はお客さまが相手の場合は使い分けるべきなのではと思っています。
「or」的な意味合いの接続詞
次に「or」的な意味合いの接続詞として、
- 又は(または)
- 若しくは(もしくは)
- あるいは
というものがあり、これは要は「か」みたいな感じです。
乃至と同様「あるいは」は(多分)法律用語というわけではありませんが、
- メガネまたはコンタクト
- メガネもしくはコンタクト
- メガネあるいはコンタクト
と、どれも今のところ意味も通じるし、こちらは特段の問題を感じていません(あくまで今のところ)。
ただ「メガネかコンタクト」といったほうが、一般的な、誰に言っても通る言葉になるのも事実だろうなというのが私の感覚です。
「及び」「並びに」を説明やブログで使うべきか
というように、私のなかでは、
- 及び
- 並びに
- 乃至(ないし)
の3つは、一般的な、「誰に言っても通る言葉」であるとは言えないのでは、という感覚を持っています。
なのでこれらの言葉を経営者の方への説明やブログなどで使うべきではないのでは、という感覚をもまた抱いています。
「それぐらい勉強しなさいよ」
「低きに合わせると文化が廃れる」
と言うのは簡単ですし、納得できる部分もあるのですが、なにが優先順位の上位にあるのかを考えると「言いたいことが伝わること」が一番、なのではないでしょうか。
それと私は、
「経営者の方はどんな法律があるかを理解しておくべき」
だとは思いますが、
「経営者の方が法律用語などの細部まで正確に理解しておくべき」
とは思いません。
「中身(本質)を理解すること」と「細部まで正確に理解すること」がイコールだとは思わないからです。
そこを正確に理解し、翻訳してわかりやすくお伝えすることもわれわれのような専門家がいる価値の1つなのでは、とも私は考えています。
日本語が好きではあるが……
私は『オススメの近代文学って何?「金色夜叉」一択でしょうが!』で書いたように、尾崎紅葉や夏目漱石、中島敦といった明治~昭和初期ごろの小説が好きなので、全体として日本語が貧しくなっていくのは悲しいなあ、とは思っています。
しかし通じない、あるいは通じないとは言えないまでも「これこういう意味で合ってるんだよな?」と不安に思う方が増えてくるということがあれば、それはやはり時代に合わせる必要もあるんだろうと考えています。
こんなことをわざわざ書いたのは迷いがあるからではあるのですが、これからも「言いたいことが伝わること」をおろそかにしないようにしたいものです。
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