お姉さんが脱衣していく麻雀と向き合った16歳のあの夏、ぼくの興奮と失望とをどう表現していいものか、いまでもわからないんだ

 

 

ごきげんよう。むっつりめがねの谷口(@khtax16)である。

 

先日、妻と話していたら脱衣麻雀の話になり(どんな話の流れで脱衣麻雀の話になるんだよ)、「あ、これは書いておかないと忘れる」という使命感に駆られたため書く。

 

あれはたしか私が16歳のときだった。

当時彼女もおらず、女性と手をつないだこともなかった私は、『いかがわしい本をバイト先からくすねる108つの冴えたやり方』などでさまざまに示してきたように思春期の未経験男子特有の性に対する煩悶を日々抱いていた。

 

気がつけば、なんというかこう、女性の普段は見せない秘めた素顔(あとできれば素肌)(もっと言うと素っ裸)を見られないもんかなあと、教室の机で頬杖をついては妄想していた。

 

そんなときである。

ポケットに入れていた私のPHS(なつかしい)がブルルと震えた。

友人の男子からのメールである。

そのメールはこのようなものであった。

 

 

 

 

件名には「手に入れたぞ」としかなく、本文にはなにやらなんの表示もない。

「こいつは何を手に入れたのだ?」

いぶかる私は、改行を示す矢印に誘われるようにして画面を下へ下へとスクロールさせていった。

 

 

すると、

 

 

 

 

おわかりだろうか?

 

脱衣麻雀

の4文字が。

 

 

なんだと…!!

 

 

メールを見た私は思わず知らず立ち上がっていた。

椅子と床のこすれるガタッという音に、クラスメートが私のほうを見る。

陰キャであった私は「あ」と思い、ぺこりと無言でクラスメートに頭を下げたのちスッと座った。

 

 

そのままあらぬほうを見る。

 

 

咳払いをひとつする。

なんかごまかしたかったのだが、いきなり立ち上がった理由に咳払いはそぐわぬ。

私は席の上でもじもじしてなんか気持ち悪い感じになった。

しかし脱衣麻雀の前では多少の気持ち悪さはやむを得ぬ。

 

『伝説の樹の下で、ときめいたメモリアルをforeverしたけどwith youというよりはむしろlonely』につづいてこんな話ばかりで恐縮だが、読者が離脱せぬよう念のため脱衣麻雀の解説もしておかねばならぬ(テーマのせいで離脱ずみの可能性については見ぬふりとする)

 

脱衣麻雀というのは、ゲームの一ジャンルであり、まあ名前で想像できるものとほぼ一致しているのだが、

お姉さんと麻雀をして1勝するごとにお姉さんが一枚ずつ服を脱いでいく

といういやらしいゲームだ。

 

考えた人は完全に頭がいかれている。

 

もちろん脱ぐのはお姉さんのみで、主人公の男は負けても脱がない。脱がれても困る。誰も喜ばない。

あと麻雀というのは本来4人で行うが、このゲームでは主人公とお姉さんが1対1で争う。

勝てば脱がせられる。負ければコンティニュー(課金)。という苛烈なゲームだ。

(私のうっすい知識と記憶で解説しているため、誤り等ありましたらTwitterでご連絡ください。さらします)

 

当時、ゲームセンターのほか、バッティングセンターなどにも堂々と置いてあり、お子さまが見られるところでこれまた威風堂々たるおじさまがプレイされていたような記憶がある。ある意味おおらかな時代であった。

そしておじさまは勇者であった。

むっつりすけべ頭領(自称)である私にはとてもできない。35歳になったいまでもムリだ。48歳ぐらいになれば行けるかもしれない。

 

勇者でなかった私がプレイしたのは、もちろんゲームセンターなどで衆目にさらされながらやるタイプではなく、たしか友人が持っていたセガサターンで発売されていたゲームであった。

買って上述のメールをくれたのは、『「アンインストール」という言葉の意味さえ知らなかったあの頃のぼくら』の話でもたびたびご紹介しているが、クラスのいかがわしい情報担当大臣であったSくんである。さすが。漢の中の漢。

 

私はそんな気持ち悪いもじもじ感を醸し出したまま、胸が張り裂けんばかりの期待感で放課後を待ち、チャイムが鳴るや否や急ぎ足でSくん宅へ向かった。

 

「・・・・やったのかッ!!」

 

いま考えると何が「やったのか」なのかぜんぜんわからないが、戦場で同僚が因縁の敵機を撃墜した報に接したときの態度で私はSくんの部屋のドアを開けた。

 

Sくんもまた誇らしげに、私のほうを見てニヤリとうなずく。

手にはセガサターンのコントローラーを握り、あぐらをかいている。

なぜそんな姿勢でそんな誇らしげな顔ができたものか謎である。

背景にも「脱衣麻雀」というタイトルがでかでかとテレビに映っている。

(タイトルをまったく覚えていないため、『脱衣麻雀』という「さすがにあからさますぎるだろ」というタイトルであったものと仮定して進めさせていただきます)

 

ここでふしぎなのが、私の記憶が飛んでいる点である。

私の記憶では、なぜか私がひとりでセガサターンで脱衣麻雀をプレイしたことになっている。

私の家にはセガサターンがなかったため、Sくん宅であったことは間違いないのだが、このときSくんはどこにいたのだろうか。

気を利かせて部屋から出ていてくれたのか? いやさすがにちょっと嫌じゃない? 自室で友人がひとり脱衣麻雀やってるとか。

あるいは、同じ部屋にいてマンガでも読んでいたのを、私が記憶から抹消しているのか。

いやゲームソフトも買ってもらってハードも借りた状態で記憶から抹消するって相当ひどいな。報いを受けよ。

(そう、もしかしたら、私がここで脱衣麻雀をした経験をさらしていることが報いなのかもしれぬ。私はSくんへの贖罪としてこれを書いている。決して個人的な趣味に基づくものではない)

 

というわけで、状況はうろ覚えだが、脱衣麻雀ゲームを私が興奮しながらプレイしたことだけは覚えている。

先に言っておくが、私は麻雀がどへたである。

ルールは最低限知っていたが、捨て牌の読み方などもわからないし、まあ底辺のレベルと思っていただいて差し支えない。

 

しかし私は勝ちたかった。

絶対に負けられない戦いがそこにはあった。

なぜなら勝たないとお姉さんが脱いでくれないから。

私は石にかじりついても勝利を得なければならなかった。

これから脱衣麻雀をやるかもしれない青少年に向け、どへたであった私からひとつアドバイスを送ろう。

 

負けてもひたすらコンティニューしろ。

絶対にあきらめるな!

ゲームセンターだと課金に限度があるが、家庭用ゲーム機なら何度だってコンティニューできる。

待っていればそのうちいい手がくる。

そのときまで、何度だってコンティニューするんだ…!!

行けよ!! そこで押せ!! 魂のコンティニューボタンを…っ!!

 

--- ○-○ ---

 

といった具合にコンティニューしまくって、一枚一枚お姉さんに衣服を脱いでいただいていった私は、お姉さんが下着姿になると思わずコントローラーでメガネを覆いこう叫んだ。

「えっ、いいのっ? お姉さんが下着姿になってしまったけれどもいいのっ??」

 

自分でそういうゲームをプレイしておいて何が「いいの」だ。誰の許可を確認してるんだばかやろう。

 

いまであればそのように叱責し、「はーい抵抗あるならメガネ割りますねー」といった処置も容易であるが、当時の私ははじめての脱衣麻雀に錯乱してしまっていた。

錯乱してしまっていたけれども実際には画面をガン見であった。

 

そんな戸惑いを抱きつつ、さらにゲームを進め、お姉さんが上の下着を取り、ついには下の下着さえも脱ぐこととなった。

ゲームの性質上、下の下着を脱ぐともう脱げる衣服がないため、ゲームクリアとなる。

(こんな話を書いといてなんですが、直接的な単語を用いるのは抵抗があるため下着についてこのような表記としております)

(あといまさらですが、たしか、水泳部だかなんだかで日焼けをした浅黒い肌のショートカットのお姉さんでした。いらんかこの情報)

 

私はついに「キャーッ!!」と叫んだ。

キャーと叫びながら指で目を覆いつつ指の隙間から画面を凝視した。

 

クリアとなり、エンディングを迎えるとお姉さんはアニメーションになり、絶妙なカメラワークでお姉さんの足元だけが映った。

日に焼けた健康的な肌の、そのなまめかしい足首。

パサリ、と下着が地面に落ちる。

 

いよいよである。

 

私はごくりとつばを飲んだ。

いい年した男女が、部屋で裸になったということは、つまり18歳未満だと見られないような営みがゲームクリアの特典として披露されるのであろう。

私は覆った指を開いたり閉じたりした。もはや各指のエクササイズのごとき様相を呈している。

 

ついに、すべての衣服を脱いだお姉さんへ主人公が近寄る…ッ!!

 

 

 

ただいまー

 

 

あれ、お母さんが帰ってきた・・・ッ!?

 

ゲームの中で、お姉さんの、お母さんが帰宅した・・・ッ!?

 

ということは??

 

営みすんのむりぽ???

 

「ごめーんお母さん帰ってきちゃった☆」

 

てへっ、と舌を出して画面の中のお姉さんが笑う。

 

 

 

いや何もしないんかい!!

 

本当に脱ぐだけなの!?

 

「脱衣麻雀」の看板には偽りなしだけど!!?

 

マジでなんの営みもしないのッ!!???

 

 

・・・と、友人の家で人生ではじめて脱衣麻雀をやった結果、「服は脱げども営みなし」という事実に衝撃を受け三日三晩寝込んだ話でした。

(マジでショックで数日引きずった)

 

こんな中身のない話で4,000文字近く行ってるっぽいんだけど、正気かな??

また、『【悲報】家族のほぼ全員にブログを見られました』に引き続き、最近義理の妹さんにブログを発見され、ふたたび冷や汗が脇からナイアガラ状態になったことをここにご報告いたします。

でも書く。なぜならこれはSくんへの贖罪だから。

決して、私の個人的な趣味ではないのだから・・・!!

 

めがね。

 

 

 

▼ Sくんが登場する話

『「アンインストール」という言葉の意味さえ知らなかったあの頃のぼくら』

『伝説のいかがわしい番組「トゥナイト2」をキミは知っているか? えっ知ってるの? それってちょっと不潔じゃない??』

 

 

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